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「ぼくたち負けたんですか」 先発、失点、苦い降板 - 鳥栖商・城本(2003.08.22)

これだけ人は泣けるのか、というぐらい、鳥栖商の城本は泣いた。先発するも、4回途中に降板。「重野に、そして使ってくれた監督に申し訳なくて」


堀江監督は、これまで2試合を完投した重野ではなく、城本を先発に選んだ。「うちはスターはいない。全員にチャンスを与えたかった」。城本は昨秋に肩を壊すまでエースだった。その右腕にかけた。


立ち上がりは直球で押し、相手打線を詰まらせた。1点をリードした3回、「ここを抑えれば勝てる」との思いが腕の振りを鈍らせる。先頭打者に四球を与え、崩れていった。


リードを広げられても、鳥栖商は攻め続けた。失敗しても何度も盗塁を試みた。守備でも5回に盗塁を刺したり、内野手がイレギュラーを丁寧に処理したり。池上主将も「一人も守りの姿勢になるものはいなかった」と胸を張った。


10年前に初出場した時、常総学院に1-11で敗れた。雪辱はならなかったが、実力の差を縮めたことは証明した。


試合後、みんなが笑顔を取り戻す中、城本だけは泣いていた。「こんな強いチームが負けるなんて。本当にぼくたち負けたんですか?信じられない」。常総学院を本気で倒そうとしたからこそ、涙がいつまでも止まらなかった。


朝日新聞、2003.08.22東京朝刊17面)