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何の変哲もない、平均的な

高校野球のこととか

秋田、土壇場の「花吹雪」 失策なんか気にしない(1986.3.27)

第1試合(1回戦) 秋田(秋田) 3-2 高松西(香川)


低めによくコントロールされ、右打者のふところ深くシュートでゆさぶる高松西・新鞍に秋田打線は手を焼いた。ゆっくりとしたモーションから、くるりと「1」をつけた背中を打者の方にむける変則投法が、さらにタイミングをとりにくいものにしていた。


雪にとじこめられていただけに「守りのミス」には目をつむるつもりではあった秋田とはいえ、1回は捕逸、2回は内野手の失策がいずれも失点に結びつき、リードされたまま試合は早くも終盤。「このまま……」の思いがスタンドをおおいはじめていた。


だが、8回の攻撃前、ベンチに選手を集めた小野監督は「まだ2回もあるじゃないか。じっくり攻めよう」。それに応えた攻撃は牧野の死球を足場に2死三塁。2番の長嶋が2-0と追い込まれながらもよくくらいついて中前タイムリーでまず1点。


左腕の2年生、斎藤新がその裏を3人でピシャリと抑えた。


9回の先頭打者は4番で主将の捕手・高田。チームきってのロングヒッターながら、この試合は新鞍に幻惑され、それまで三振、三ゴロ、二ゴロ。ところが打席に入るとき、「この場面ならホームランを狙ってやる」と思い切っていた。ボール1からの2球目カーブが真ん中に入ってきた。鋭く振り出されたバットは白球をみごとにとらえ、打球はすばらしい角度で飛び出した。瞬間にそれとわかるホームラン。主砲に大会第1号が出て同点になれば、秋田の押せ押せムードは一層勢いをもつ。1死後、佐藤健が右前打すると、迷うことなくすかさず二盗。2年生の石井も右前にはじき返し、最後の最後で一気の逆転だ。


「満足な守備練習がやれなかったので、試合はおそい方がいいと思っていた」のに、開幕第一戦を引き当てた秋田だが、スタートこそミスが出たものの、その後粘り強く追加点を与えなかった地道な試合運びが土壇場の「舞台」を引き出したといえよう。


秋田の甲子園練習をみた池田・蔦監督がふともたらした言葉は、「うーん、ええチームじゃ。旋風を巻き起こすかもしれん」。


21年ぶりの甲子園出場、センバツで、初の校歌を歌いあげたナイン。どんな風を呼ぶのか。楽しみでもある。


(毎日新聞、1986.03.27東京朝刊16面)